2013年3月4日月曜日

リーダーシップ研究大学出版 伝えたいことは何か? どのように考えたか? 


行動科学アカデミー講座

「行動科学とリーダーシップ研究Ⅰ」 ポイントをブログにアップしています。
http://blog.goo.ne.jp/irisassociates/e/aa7c48a65219daa75f93f2f1735748ba



【ポイント例】
•マネジャーの能力:専門的能力、対人的能力、概念化能力
•この統合という人的側面が果たされなかったら、企業家は単なる「騒動屋」に、運営者は「官僚」に、そして生産者は「一匹狼」に終わってしまう。

•優れた対人的能力の要素:
①行動の理解:動機とその背後にある原因に、ほとんどの行動科学諸文献の焦点が置かれている。・・・特定個人なり集団なりの行動の理由を説明するのに役立つ。
②行動の予測:同じ条件下で、または変動する条件下で、明日、次の週、そして次の月、その従業員がどう行動するだろうか、を監督者に予見させることになる。
③行動を導き、変容させ、制御する:理解したり、予見したりする場合には、他人への働きかけというアクションは必要ではない。結果をあげるための鍵は、組織目標の達成へ向けて、他人の力を指揮し、変容させ、制御することにある。この働きを通して、マネジャーはアイディアや意図を現実の成果へと翻訳してゆくのである。

•リーダーの効果性は、「相手の行動の理解と予見、そして相手への影響」にかかっているのである。
•「行動科学者とは諸々の学問領域から、個人ないし集団の行動の判断に役立つ概念、理論、研究などの集約を試みる人」
•マネジャーには、厳密な意味での原理原則や普遍的真理は存在しない。人々のあり方を予見することは至難である。行動科学のできることは、「打率を上げる」ことである。言い換えれば、行動科学は確率の科学であり、マネジメントに原理原則など存在しない。

リーダーシップ研究大学出版
伝えたいことは何か? どのように考えたか? 
http://uls-pub.blogspot.jp/

リーダーシップ研究大学の出版物(CLS双書を含みます)の内容をすべて掲載しています。
「立ち読み」もできます。

「第4部:組織を動かす、第 9 章 リーダーシップの発揮」担当
(抜粋)

1. 時代が求めたリーダーシップ

集権的リーダーシップ
分権的リーダーシップ
価値共有のリーダーシップ
変革のリーダーシップ

2. リーダーシップ研究の変遷

特性理論
行動理論と条件適合理論
マネジャーシップとリーダーシップの比較研究
トップ・リーダーシップ研究

3. リーダーシップ研究に残された課題

リーダーシップ研究は、一般的に説明力が低いことが指摘されてきた。「リーダーシップの効果性は理論的には興味深いが、実務的にはあまり関係がない。というのも、いずれにしても誰かがリーダーになり、あらゆる訓練をされ、影響が大きかろうが小さかろうが、何かをしなければならないからである( Pheffer, p.130 、筆者訳出)」と指摘されるように、研究は数多く行われてきているが、実務的な貢献が少ないといわれる。
中略

4. 21 世紀のリーダーシップ

現代はネットワーク化された社会であり、これまでの生産力を基盤とした官僚制階層組織が有効に機能しなくなった時代である。 IT 化されたネットワーク社会のリーダーシップ研究は、ほとんど行われていない。現代の事業創造の成功者として研究されているリーダーたちは、シリコンバレーなどの新しい市場を開拓した企業家(アントレプレナー)たちである。コッター( Kotter [1988] )は、リーダーシップとアントレプレナーシップを比較して、次のように述べている。
図表 1 :複雑組織における効果的なリーダーと典型的な企業家

効果的なリーダー
典型的な企業家
アジェンダ設定
企業全体の合法的利益を追求するビジョンと戦略を創造する
企業家自身とその仲間にとって最良のビジョンと戦略を創造する(たとえ、それが企業全体にとって最良でなくとも)
ネットワーク構築
上司、同僚、部下、さらに外部の人々を含む実施ネットワークを構築する
ときには重要な同僚や上司を無視することもある一方、強力で凝集性のあるネットワークを構築する
出所: The Leadership Factor, Kotter, J. P., The Free Press, 1988, p.25 より訳出

この比較では、「典型的な企業家」は自分自身の資源を活用する個人主義者ととらえられ、「効果的なリーダー」は組織資源を効果的・効率的に活用し組織利益を追求する経営者と読みとることができる。ネットワークにおいて新しく事業創造し、その事業ネットワークを発展させる企業家は、「典型的な企業家」と「効果的なリーダー」の両側面を持ち合わせていると考えられる。企業家は、自分自身の資源で事業をスタートさせる一方、強力で凝集性のあるネットワークを組織化し、その組織資源を活用して事業活動を行い、組織利益を生み出す企業家的リーダーととらえることができる。その意味で、現代のリーダーシップ研究は企業家研究に学ぶべきところがあると考えられる。
中略
IT 革命は、官僚制階層組織のような大企業でなくとも、小さな個人でも事業創造をすることを可能にした。 21 世紀のリーダーシップは、ネットワークのなかを縦横無尽に走る情報の中から、必要な情報を経営資源として活用し、それによって利益を生むシステムを創り出すリーダーシップである。これは、既存の情報や他人がもっている情報を、自分の目的にかなうよう組織化し、新しく組み立て直すことである。これによって、新しい商品やサービスを創り出したり、新しい経営システムや生産システムやマーケティングシステムなど、新しい知識を創り出すことになる。このようにしてできあがった事業は、従来のような官僚制階層組織を必要としない。ネットワークに点在するメンバーたちが、事業に共鳴し、事業参画能力を持ち、事業からのリターンを期待している場合に、集まり組織化される。
IT によってネットワーク化された企業環境は、物理的に大きな資本がなくとも、あらゆるネットワークから事業資源を獲得できる方法を提供したといわれる( Saxenian, p.57 ) 。ネットワーク社会では、官僚的階層組織のような大企業や大資本でなくとも、 企業家 個人にクレディビリティがあれば、多くの事業資源を惹きつけることができるといわれる( Bhide, p.239 ) 。もちろん、事業アイディアや事業計画も重要であるが、資源提供者は、特にスタートアップの 企業家 に対しては、ネットワークとの関わりを示すクレディビリティの方を重視することがわかった。このことは、事業創造のリーダーシップには、従来のリーダーシップ研究が依拠してきた階層的権威ではなく、ネットワークとの関わりを示すクレディビリティが欠かせないことを物語っている( 山本 , p.47-52 )。

5. まとめ